美しい日本の自然と、そこに生きる野生動物の生命の有り様に魅了され、写

真家を職業として、早40年余りが経つ。

 春、夏、秋、冬と巡りくる季節とともに、カメラを抱えてフィールドへ出か

て行く。そこで、今日はどんな発見があるだろうか、もしかして思いもよらな

いことがあるかもしれないと、ワクワクする気持ちに今でも変わりはない。

 南北に細長い日本列島は周囲を海に囲まれ、狭い国土ながら長い海岸線や無

数の島々・山・森・川・湖沼・草原など、大変変化に富んだ自然環境のなかで

多くの動物たちが生きている。

 心地よい春の一日、河原に咲くハルザキヤマガラシの群落で、嘴を大きく開

き赤い口の中を見せながら囀るオオヨシキリ。燃えるような紅葉の山の斜面で
ハイマツの実をむさぼるように食べるエゾヒグマ。凍てつく川の中で眠るタ

チョウの群れ、、、。

 そうした光景が、時には光や風、気温や時間など様々な気象条件が相まって
より絶妙な自然の舞台演出を見せてくれることがある。

 そんな経験をいく度か積み重ねていくうちに、自分自身の自然への思いが更

に高まっていくような気がする。

 わたしのライフワークは、写真を始めた時から一貫して「日本の野生動物」

であり、以来こだわり続けている。

 四季折々の繊細なまでの移ろいと風土の多様さのなかで、動物たちはそれぞ

れに適応して生きている。最も心魅かれるのは、そんな野生の生き様かもしれ
い。

 言い換えれば、野生を通して自然を見つめることであり、自然を通して野生
見つめていきたいと思っている。


                              久保敬親




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